業務用エアコンの暖房で空気が乾燥する理由とは
温度が高くなると湿度も高くなるはずですが
エアコンの暖房=空気の乾燥という公式は、誰しもが知るところではありますが「温度が高くなると湿度も高くなる」ということは、あまり知られていないのではないでしょうか。では、なぜ暖房の効いた温度が高い部屋で乾燥が起きるのか?一見矛盾しているように感じるこの謎を紐解いてみましょう。
空気の乾燥は相対湿度と関係している
温度が高くなると湿度も高くなる。ということを詳しく説明します。
空気中に蓄えられる水分量は、空気の温度によって左右されます。
温度が高いと多くの水分を含むことができますし、温度が低いと少ない水分しか含むことができません。
ポイントは、あくまでも「含むことができる」という容量の話だということ。
以下の仮説を参考に見てみましょう。空気中の水分を5だとした場合、
A:水分5÷温度の高い空気の容量20=湿度25%(空き容量75%)
B:水分5÷温度の低い空気の容量10=湿度50%(空き容量50%)
同じ水分量でも、AよりBの方が湿度が高くなります。
水分量が15に増えた場合は
A:水分15÷温度の高い空気の容量20=湿度75%(空き容量25%)
B:水分15÷温度の低い空気の容量10=湿度150%(空き容量-50%)
同じ水分量でも、Bは水分を蓄えることができず結露が起こります。
つまり、湿度は水分量の絶対数ではなく、温度に対しての相対的な水分量=相対湿度が影響しています。
エアコンの暖房運転の仕組みと乾燥の関係
相対湿度からもわかるように、エアコンによる乾燥は、暖房の温風が空気中の水分を奪って起きる現象ではありません。
冷えた空気が暖房で温まり、水分の空き容量が増えてしまうのが原因です。
しかし、エアコンと同じように空気を温める暖房器具でも、石油ストーブやガスファンヒーターはさほど乾燥が気になりません。
なぜなら、それらの暖房器具は温風と同時に水蒸気を排出しているためです。
エアコンの暖房は空気を直接暖めて室温を上げるため、空気中の水分は増えません。
さらに、暖房運転は外気の熱を集めて室内へ移動させる仕組みです。
冬は外気自体に水分があまり含まれていないため、室内を暖める温風は自ずと水分が少ないものになります。
この要因が重なって、温度は上昇するも水分は増えない、水分の空き容量だけがどんどん増えた状態になり、部屋の乾燥が進むのです。
エアコンの暖房を使う時は加湿しよう
エアコンによる乾燥は、冬の悩みのひとつです。
特にオフィスなどでは、業務用エアコンの暖房が効いた空間で長時間過ごすことになります。
肌や髪の毛のパサつきをはじめ、目の乾きや喉の痛みなど体の様々な箇所が、乾燥した空気の影響を受けて辛く感じることも。
また、相対湿度が低いと体感温度が下がるため、なかなか体が温まりません。風邪などのウイルスや菌も活発化しやすくなります。
それらを防ぐ方法は、暖房時の加湿しかありません。加湿機能がついたエアコンもありますが、業務用においてはまだポピュラーとはいえません。
そのため、部屋の水分量を上げる工夫が必要です。
最も効率的なのは、加湿器を併用することです。
空間全体をカバーする業務用の加湿器を使用したり、卓上で使用できるコンパクトなものも便利です。
家庭の乾燥対策同様、濡れたタオルを干したり、蒸散効果を利用して大きめの観葉植物を置くのも効果があるようです。
エアコンの暖房と快適に付き合うためにも、室内の湿度は50%を目安にキープするようにしましょう。